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2008’12.06・Sat

少女期の終わり

ネタがないので、某所で行われた緊急掌編企画(お題:「真っ白」、「初心」、「朝」)で出させていただいた作品を晒そうと思います。
ちなみにキャラの名前はアニメ化した某ゲームからの丸パクリです(ぁ
冒頭は「マメシバ」(「地球少女アルジュナ」OPテーマ)を聴いていたときに思いつきました。
状況は色々とメタファーっぽいのを入れてみましたが、機能しているかどうかは限りなく微妙です。
今書いてるヤツにも結構あちこちにメタファーを含ませているのですが、もう少し上手く使えるようになりたいなぁ……。少なくとも読者様が気づいてくれるくらいには。


BGM:天地咆哮(「Fate/stay naght A. OST」より)


『少女期の終わり』

 昨日降った雪は、街中をすっかり白く染め上げていた。
 優子と智也はそんな真っ白な世界の中、二人きりで、団地へと続く坂道を登っていた。
 やがて二人はある場所で静止する。二人が一緒に下校するとき、いつも街を眺めていた場所。麓を一望できる、優子が子供の頃から大好きな場所。
 ガードレールの側に立つと、普段とは違う光景が彼女の目に飛び込んでくる。街の中にいるときとは違う、〝白銀の世界〟という陳腐な比喩が似合う光景。それは奇しくも、一年前と全く同じものだった。
 その横に智也が立つ。優子一人じゃないのは、ずいぶんと久しぶりのことだった。
「――話ってなに?」
 心の底では分かっていても、優子は尋ねずにはいられなかった。針の筵のような沈黙にこれ以上堪えられそうになかった。
 冷たい風が二人の間に吹く。しかし二人はじっと、震えることすらしない。答えを待つ優子は彫像のように、答えを言う智也は蛇に睨まれた鼠のように。
 しばらくして智也が口を開いた。
「俺、東京の大学受けることにした」
「そう」
「ごめん」
「それで?」
 まだ本題に入っていないことが、優子には分かっていた。智也は普段素直なのに、肝心なところで回りくどくなるという妙な癖がある。
 智也の表情が沈痛なそれに変わる。図星だったようだ。
「だからお互いのこと考えてさ、俺たち、別れた方がいいと思うんだ」
 嘘だ。
 優子は顔を背けて街を見る。その目には暗いものがうっすらと滲んでいる。
 いつかこうなることは、もう数ヶ月前――ちょうど夏休みの明けた頃から何となく分かっていた。
 兆候もあった。最初は髪を切ったことに気づかないという、ごくごく些細なことだった。つきあい始めた頃にもそういうことはよくあったので、大して気にしていなかったが、徐々に智也の態度が変わっていくのが嫌でも分かった。
 端的に言うと、智也は冷めていった。
 言葉や仕草の端々からそれが感じられた。告白してくれたときのような、あの受け止められなさそうなほどの熱さはもうとっくに消え失せていた。友達に協力してもらってようやく実現できたあの夜、初めての優子を包んでくれた優しさも、翌日の朝、優しくキスしてくれたときの態度も、何もかも。
 智也が続ける。心から絞り出すような、その実、冷め切ったような声で。
「俺、この関係を続けていく自信がないんだ」
 そこから先を、優子は聞き流した。全部聞いたとしても、結果は全く変わらない。ならいっそのこと、最初から記憶しない方が幾分マシだ。
 冷めていったのは、優子自身も同じだった。初めこそ何とか智也の気を惹こうと努力したが、無駄だと分かると自然に任せた。
 その感情は、諦めとよく似ていた。
「ごめん」言い訳が終わり、智也はそう謝罪した。用意していたかのような言葉だった。
「いいよ。受験、頑張ってね」
 その言葉に智也は拍子抜けしたようだった。ドラマみたいに罵倒されるものだと思っていたらしい。一年前の初心な優子なら恐らくそうしていただろうが、今はそんな気力もない。
「――ごめん……」もう一度謝る。今度のそれには、本当に智也の気持ちがこもっているように思われた。
 小さく溜め息をつき、優子は智也の方を見る。
「早く行きった方がいいんじゃない? 勉強、忙しいんでしょ?」
 それが優子なりの、精一杯の捨て台詞だった。
「ごめん……」
 智也は本当に悲しそうな表情――優子が一番嫌いだった表情を浮かべてそう言うと、彼女に背を向けて、ゆっくりと坂道を降りていった。
 やがてカーブに入り、智也の姿が見えなくなる。結局、彼は一度も振り返らなかった。
 優子はそれを見送ったあと、再び街に目を向け、ゆっくりと白い息を吐いた。ガードレールに両腕を置き、そこに顔を埋める。
 風が止む。沈黙が降りる。彼女の息だけが空気を震わせている。
 やがて――
「――嘘つき……」
 くぐもった声で、優子は小さくそう呟いた。その声は、かすかに湿っていた。

 しばらくして優子は顔を上げた。暗く染まりつつある白銀の世界を、もう一度見渡す。まるで瞼に映像を焼き付けようとするかのように。
 やがて彼女は踵を返し、坂道を上り始める。
 真っ白だったそこの雪は、ところどころ煤と泥で黒く汚れていた。
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